「新しい女」の新垣美登子、放浪歌人
■の池宮城積宝、この癖のある二人が夫婦というのも(略)。
私の記憶に間違いがなければ旧那覇市の一角、上之蔵通りの真ん中程にあった新垣医院の二階とおぼしき部屋か、それとも植え込みの奥の座敷あたりからその声は響いてきた。もちろん、若い女声、それもかなり張りのあるソプラノで歌をうたっていた。何の歌だったのか忘れたが、歌声は移動するかのように急にきこえなくなった。歌声の主は大胆であたりかまわぬといったおてんばぶりを発揮していた。
後に歌声の主は新垣美登子さんだとわかった。
美登子さんの扮する女性に男性が言い寄る場面、つまり美登子さんが濡れ場を演じている場面で、客席で観劇していた[池宮城]積宝氏がたまりかねて、大声で「幕、幕、幕」と叫びだし、お陰で芝居はぶちこわしになった話は有名である。
沖縄人物シネマ/牧港篤三 p173、175(省略と編集)新垣美登子さんは若い頃のエピソードなども自分で書いています。しかし読んでみても金持ちのわがまま娘がお転婆やってやがんなとしか自分には感じられません。年とってからもいろんな話があるようですが、そのエピソードもあまり変わりありません。
「新しい女」であるための必要条件は、なによりも生活の不安がない程度の資産だったというのは明白でしょう。
【追記】とはいうものの「那覇女の軌跡」を読むと、いいところのお嬢さんが戦前に髪結いとして自立し、戦後も職業婦人育成のために力を貸したことも書いておかないとフェアじゃないかと思い直しました。
興味のある方には「那覇女の軌跡」をお勧めしますが、小説類はともかくエッセイ類はあまりお勧めしません。